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  ポーカーの高速道路とけものみち

     自分の大好きなポーカーに関する戦略などを紹介



このブログについて

自分の大好きなポーカー(特にTexas Hold'em(テキサスホールデム))
というゲームに何か貢献ができないかと思い、ブログを始めました。    
ポーカーに関する戦略などを紹介していきたいと思います。         

【書評】 The Poker Tournament Formula II〜一周回ってSmall Ballか??〜

The Poker Tournament Formula II: Advanced Strategies
The Poker Tournament Formula II: Advanced StrategiesArnold Snyder

Cardoza 2008-07-08
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 「あなたの知っていることは大半が誤りだ」という衝撃的な書き出しで始まる「The Poker Tournament Formula II」。この本において著者のArnold Snyderが提唱しているのが「Chip Utility理論」です。

 Chip Utility理論は、トーナメントにおけるチップは、キャッシュゲームにおけるチップと異なり金銭的価値を示すものではなく、「銃弾」だという認識を出発点としています。また、個々のプレイヤーの「スキル」は、武器(銃器)に当たるとします。
 その結果、銃弾となるチップがなければ武器であるスキルは発揮できず、チップを買い足すことができずブラインドで徐々に失われるトーナメントにおいては、チップには単なる成績の目安以上の価値があるとしています。
 スキルを発揮するためにチップがあり、チップがあれば次のようなことが可能となるとしています。

  • チップがあればブラインドをスチールできる。
  • より多くのフロップを見ることができる。
  • ハンドが来るまで我慢できる。
  • 相手をフォールドさせることができる
  • C-betができる。
  • セミブラフができる。
  • インフォメーションベットができる。
  • バリューベットができる。
  • ブラフにコールできる。
  • 相手のハンドを知るためのコールができる。

 このようなプレイを行いスキルを発揮することを可能とするためには、チップを大量に持っていなければならず、また相手のチップを奪うことで相手のスキルを発揮する機会を奪うことができるとしています。ここから導かれる法則が「Chip Utilityの基本原理」です。

 「チップを多く持てば持つほどチップの価値は増し、持っているチップが少なくなればなるほど、そのチップの価値は下がる。

 この基本原理から、「得たチップは失ったチップより価値があり、失ったチップは勝ち取ったチップよりも価値が低い」ということが導き出されるため、Chip Utilityの考え方は、ルースアグレッシブスタイル、スモールボールスタイルと親和的となります。
 Chip Utilityの観点からは、チップはより多く持つことで価値が増えるため、通常のオッズ計算に基づきコールするか否かの判断を行うことは必ずしも正しいとは限らないとします。オッズに合わなくとも仮に勝った場合多大なチップリードを得られるのであれば、コールすることも正当化されるとしています。

 Chip Utilityを数値化することは複雑で難しいですが、著者はスタックの範囲によってUtilityを分類しています。

 以上がこの本の概要ですが、Chip Utility理論によって、なぜ序盤にチップを増やしたプロがその勢いのまま優勝してしまうのかが理解できます。例えば、2007年Aussie MillionsのGus Hansenが典型例です。序盤にチップリーダーになってから自らのスキルをフルに発揮してテーブルを支配し続け、そのまま優勝しています。(Every Hand Revealed)プロは、Chip Utility理論を理論として知っていなくとも、経験から学んでいるのでしょう。

 この本でも十分に明らかにされていない点としては、チップを増やすとテーブルを支配できるので、リスクを冒してでもチップを増やすため、ルースアグレッシブにプレイすべきというのは分かるのですが、ではどうやったらチップを増やすことができるのかということです。
 例えば、サバイバルの誤謬として、トーナメントで生き残ることに主眼を置きすぎる者は、取るべきリスクを取らず既に序盤で負けてしまっているとし、序盤から積極的にチャンスを掴むべきだとはしていますが、具体的な指針として十分とは言えません。ディープスタックトーナメントの序盤にチップの山を築くガイドラインとしては、

  • とにかく多くのハンドをプレイする、
  • ハンドのみに頼らずブラフをする、
  • バイバル志向のプレイヤーを見つけて攻撃する、
  • ルーズアグレッシブなプレイヤーのターゲットとならないようにする、
  • ギアを頻繁に変える、

などを示していますが、訓示的なものであり、具体的・実用的とは言えません。
 もはや、このレベルに来ると、高速道路は終わっており、渋滞地帯となっており、そのまま先に進むか自分でけものみちを見つけるしかないのかもしれません。